Prediction

人間が人間について予想することは
だいたい当たる、について。



出自・性格・習慣・言語など
何の背景も知らない人を相手にした場合にも
コミュニケーションは成り立つ。

たとえば知らない街で知らない人とすれ違うとき
お互いに不快にならないように適度な距離を保って
すれ違うことができる。
もし道を聞きたければ
程よいところからそのシグナルを出して
相手に自分の存在を気づかせ
相手を驚かせない近づき方をして声をかけ
尋ねたい内容を言語その他の手段で伝える。

こうした“あたりまえ”が
あたりまえとして成り立つのも
「相手はこうするだろうな」
「ということは自分はこうすればいいな」
「そうすると相手は次にこうするだろうな」という
お互いの予想が当たってこそ。
予想が外れれば突発的なことが起きるが
それはめったに起きないから突発的なのであって
つまり、ほとんどの出来事は
予想の範囲内で起きているといえる。
どんなに空気の読めない人であっても
それぞれの感度において
日常生活は阿吽の呼吸の連続なのだ。

Schelling(1960)は人間の協調性(Coordination)や
予想(Prediction)について実験を行った。

①見ず知らずの人と打ち合わせなしで$100を山分けする。
自分の取り分を紙に書いて提出し
二人の合計が見事ぴったり$100だったら
それぞれに取り分が賞金としてもらえる。
さて、いくらと書く?

②見ず知らずの人とNYCで会う。
時間も場所も打ち合わせなしで会えそうなところを選ぶ。
何時何分にどこへ行く?

$100の山分けでは90%の人が$50と答えた。
待ち合わせの時間はほぼ全員が正午とし
場所については大多数が
Grand Central駅の案内所と答えた。
Schellingはこうした調査をいくつも行い
「同じことをしようとしている人同士は
自分の意図や期待を相手と合わせることができる」
(p.57)と述べている。

Clark(1996)はこの協調と予想は
言語使用において絶えず行われているとした(pp.72-73)。
言語を使うということはすなわち
小さな協調を積み重ねながら
話し手の意味することと聞き手の理解を
すりあわせていく(coordinate)ことだと述べている。

知能の高い生き物同士は相手の行動がほぼ予想できる。
まして人間には言葉など伝達手段が豊富にある。
家庭→地域→社会と
段階的に予想力を養う場も用意されている。
相手の嗜好などについて予備知識があれば
それに応じてより正確な予想を立てることもできる。

もし人間がお互いに快適に暮らすことを
まじめに追求しはじめたりしたら
きっとそんなことは簡単にできちゃうのだ。

でも敢えてそうはしないで
不愉快や不都合や不条理や損得を取り入れて
相手の嫌がることをしたりもして
すったもんだを繰り返す。
欲もエゴも弱さも使い道はあるし
ポンコツも整備不良も排除はできないからね。
世の中には複雑で面倒くさいことを巻き起こさないと
気が済まない人も多いようだし。

「人間関係は難しい」なんていうけど
その難易度をコントロールしているのは自分たち。
わざとやってんだからしょうがない。


References:
Clark, H. H. (1996). Using language. Cambridge: Harvard University Press.
Schelling, T. C. (1960). The strategy of conflict. Cambridge: Harvard University
Press.

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by emi_blog | 2010-11-17 03:17 | その他  

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