悪女

ニューヨークシティという
美しい女のこと。



ニューヨークにいる人たちを見ていると
この街にどっぷり惚れてしまって
骨抜きにされているような気がする。
世界中の人を魅了し虜にしてしまう恐ろしい街。
スパイ映画に出てくるとびきりの美女みたいだ。

街が「夢を見せてあげる」と手招きする。
起きるはずもないことが次々に起き
信じられないことを信じられるようになってしまう。
真っ赤な爪でつまんだ“自由”をひらひらさせて
「ここにあるわよ」と人を掻き立てる。
「私と一緒にいたいんでしょう?」と甘く誘う。
そうして人はこの街から離れられなくなっていく。
街は常に貪欲に「もっともっと」と求めてくる。
息が切れて休もうとすれば
「平凡と退屈は嫌いよ」と街が耳元でささやく。
街に認められ"New Yorker"の称号を手に入れたって
彼女はいつ心変わりするかわからない。

毒も悪も含んでいなければ
魅力なんてものは生まれないのだろう。

人は街に少しでも気に入られようと必死でがんばる。
だからここには
街に慣れていない人の不安と
少し慣れた人の高揚と
慣れきった人のプライドが
交錯して渦巻いてものすごいエネルギーを発している。
そのうねりに足元をすくわれないように
みんな精一杯カッコつけて歩いている。
街はそんな人たちを見下ろして冷たく微笑む。

私にはこの街が
チヤホヤされればされるほど寂しさを埋めることができない
哀しい女のように見える。
本当はもっと静かに長く愛されたいんじゃないの?

黒くてびしょびしょの雪をどうにかしてよ、と言ったら
「うるっさいわね。
文句があるならとっとと田舎へ帰りなさいよ」と追い出された。
はいはい、帰りますよ。
でもまた来るね。
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by emi_blog | 2011-02-01 08:13 |  

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