人生の主役

「あなたの人生の主役はあなた自身」…って
どうなの?



誰が言い出したのかはともかく
どうも聞こえのいいフレーズだけが一人歩きして
発信元の意図とは違う使われ方になっているような気がする。
目からウロコが落ちたり元気が出たり
個性的で主体的で自由に生きる希望が沸いたりと
いろいろ良い効果があるらしく、やたら人気が高い。

胡散臭い。
立て板に水の営業マンが玄関に入ってきたみたいだ。
「やあどうもーこんにちはー」。

まずは“主役”という甘美な響き。
スポットライトを浴びる快感をちらっと見せられて
多くの人はすっかりその気になってしまう。
「あなたの才能を眠らせておくのはもったいないですよ」。
ありもしない埋蔵金の話を持ち込むときと同じ口調だ。

華やかな“主役”には苦労の気配がない。
これが“監督”や“座長”だったら荷が重くてウケないだろう。
面倒なお膳立てはすべて他の人に任せて
最後に颯爽と登場する雰囲気が“主役”にはある。
「楽して儲かるおいしい方法がありますよ」。
実際には脚本や演出から資金繰りや撤収作業に至るまで
裏方の仕事がいくらでもあるはずだが
そこらへんは契約書の片隅に極小の文字で書いてあるだけ。

そして今までの“脇役”な人生は徹底的に否定される。
他人ありきの姿勢は“依存”や“奴隷”という言葉で強く非難され
わかりやすく敵に仕立て上げられている。
「知らないうちに損していたんですよ、このままでいいんですか?」。
脇役で成功していない人が主役を張れるとは思えないけど。

「あなたは主役として、これから人生を謳歌するのです」
「さぁ、幸せへの第一歩を踏み出しましょう」。
爽やかな笑顔で“ペン出し”する営業マン。

うーん、でもなぁ。
主役にはそれなりの力量も度胸も要る。
ものすごいプレッシャーと責任に耐える精神力も要る。
自分にそんな大役が務まるかね?
「大丈夫に決まってるじゃないですか、さぁ早く早く」。
営業マンがんばる。

いや、待てよ。
そもそも大事な自分の人生を
映画や演劇などの興行にたとえちゃっていいんだろうか。
お客を呼んで楽しませるとなれば自己満足では通用しない。
誰かに見せて評価を受けるという前提の生き方は
主体的で自由なんだっけ?
「えーと…それはですねぇ」。

よく考えたら自分の人生には主役も脇役もいない。
だってこれは演技なんかじゃない。
台本のない、ガチンコの出たとこ勝負ですから。
「ちょ、ちょっと待ってください」。
そういえば最近この地域では
謙虚や慎ましさと引き換えに身勝手が蔓延してきている。
ひょっとして、おたくのせいじゃないの?
「あ、じゃ失礼しまーす」。
営業マン、そそくさと退散。

怪しいセールストークにひっかかって
大切なものを騙し取られないように。
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by emi_blog | 2011-02-12 18:26 | ことば | Comments(0)  

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