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自己隠し欲

“注目されたくない欲”について。



『自己顕示』の対義語はなんだろう。
『自己卑下』という言葉もあるようだが
“見せないこと”と“卑下”はぜんぜん違う。
また、『隠匿』や『隠蔽』では悪すぎる。
後ろめたいわけじゃないんだから。
“見せたくない”と“見られたら困る”も別物なのだ。

心理学の世界ではどうか知らないが
一般的な『自己顕示』の知名度・認知度と比べ
『その反対』の知られてなさ具合はひどいものだと思う。
ここでは便宜上、自己顕示欲を『+注目欲』と置き換え
その逆を『-注目欲』としておこう。
私は自分の自己評価についてここここなどで考えてきたが
私のモヤモヤが伝わりにくい理由のひとつに
『-注目欲』の無名っぷりがあるのではないかと思えてきた。
まぁ注目されないようにしているんだから
注目されなくても当たり前なんだけど。

『+注目欲』は自らの強みをアピールし他との差別化を図る。
実力以上の誇大広告をすると嫌われるが
スターには欠かせない素質でもある。
『ニュートラル』は特に注目を浴びようとは思わないが
場合によっては表舞台に立つのを厭わない。
平凡な生活に対して不満やストレスが少なく
また注目されることに対してもストレスが少ない。
結婚披露宴や社内での表彰など非日常的な行事程度なら
大きな抵抗なく注目を受け入れることができる。

『+注目欲』はよく目に付くから広く知られている。
『ニュートラル』は標準で圧倒的多数。
つまり、ほとんどの人は多少なりとも注目欲を備えているから
それが“普通”だと信じこんでいて
注目欲がまったくないという可能性を想像できない。
しかし、第3の注目欲タイプを見落とすべきではない。
注目されないことを好む『-注目欲』の人もいるのだ。

『-注目欲』は目立つことを殊更に嫌がる。
“その他大勢”に埋もれていたい欲求があり
理由がなんであれ舞台に上がるようなことは避ける。
どうしても断りきれず注目を浴びざるを得ない場合には
強いストレスを感じる。

私は中学の担任に「過小評価」と評され
アメリカのカウンセラーには"Low Self-esteem"と診断された
筋金入りの自信のなさなのだが
それだけでは説明がつかない気がしてずっと引っかかっていた。
確かに自己評価は辛いけど自分に対する信頼は絶大だし
自己満足を追求するのは大好きなのだ。
注目という邪魔さえ入らなければ結構がんばれる。

『-注目欲』は謙虚や遠慮と誤解され
「またまたぁ」"Don't be shy"と一蹴されちゃったりする。
注目欲の欠落も、注目されたくない欲の存在も
結局どちらも理解されていない。

インターネットが発達しフェイスブックやツイッターなど
注目欲を満たすツールが充実してきたというのは
『-注目欲』の人にとって冬の時代の幕開けである。
発信という手段が希望者から選抜された
ごく少数の者だけに与えられる特権だった頃なら
『-注目欲』はただおとなしくしていればよかった。
今日のように発信の場が誰にでも与えられている世界で
あえてそれを拒否するということは有標化され
「え、やってないの?なんで?」と不思議がられることになる。
やらないと目立つからという理由で参加に踏み切ることもある。
ああいう発信ツールが楽しめるのは典型的な『+注目欲』なので
『-注目欲』の人はやっぱり苦痛を感じるのだが
そこから抜けるという行為は注目を集めるから
リスク回避のために留まらざるを得ないという事態に陥る。

まぁ注目欲がある人はある人で
下手に場を与えられてしまったせいで注目欲が増幅し
いずれ自らを苦しめることになりかねない。
素人にもれなく発信ツールを与えるというのはそれだけ危険なのだが
もう後戻りはできないだろうから仕方がない。
とにかく現段階では『-注目欲』の人への負担が特に大きいと思う。

ちなみに私のように『-注目欲』のくせに
間違って注目の価値が高い国や業界に迷い込み
覚悟を決めて重い腰を上げざるを得なくなるというケースも
ないわけではない。
『-注目欲』が注目される機会を強制的に持たされるのは
『+注目欲』がその機会をなかなか与えられないのと同じく
かなりのストレスなのだが
私の場合は『嫌いなことをやるのが好き』というドMな性質により
なんとかバランスを保っている。
我ながらややこしいこと極まりない。

後づけながらこれは良い訓練かもしれないとも思う。
『-注目欲』の人を注目にさらすのは荒療治だが
その“症状”を改善する可能性が期待できる。
重度の『-注目欲』は日常生活に支障をきたすので
経験を積み注目に慣れ『ニュートラル』に近づこうとするのは
重要なことかもしれない。

by emi_blog | 2011-02-22 10:45 | その他 | Comments(0)  

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