タイヤおばちゃん

雨降りの午後に
とってもクールなおばちゃんが現れた。



うちのすぐ隣には芝生を敷き詰めた斜面がある。
雪が積もればソリを持って子どもが遊びに来るのを
東向きのリビングの窓から眺めて楽しむ。
滑っていく子どもを見届けようと思ったら
スタートと同時に南東の角部屋である寝室へ移動。
すると南側の窓から滑り終わった子どもの姿が見える。

冷たい雨がしとしとと降る日曜日。
庭に人気はない
…はずなのに
人の気配を感じたので窓の外へ目を向けた。

白人のぽっちゃりしたおばちゃん。
ま、“ぽっちゃり”といってもアメリカ基準の、ね。
日本にいたら近所で話題になりそうだけど
こっちでは珍しくない。
ヒザか腰が悪いらしく、ふわっふわっと歩いているのも
こっちでは珍しくない。
要するに、どこにでもいる普通のおばちゃんだ。

雨の中、傘もささずフードもかぶらずに現れたおばちゃんは
うちのリビング横まで来ると立ち止まり
斜面を見下ろして何かを手放した。
その横顔はまるでプロボウラー。

彼女の見つめる先が気になって“何か”を追いに
寝室へ移動して南側の窓から覗く。

タイヤだ。
ていうか、えぇぇ?
外灯の支柱にピタリと付き、立ったまま止まっている。
その画はあまりにもしれっとしていて
外灯とタイヤは「私たち、もともとこういうセットですけど、なにか?」
と言わんばかりに馴染んでいる。

雪の季節が終わったのでスノータイヤを片付けるのだろうか。
運ぶより転がしたほうがラクで早いと。
なるほど。
でもあの自然な凸凹のある傾斜の上を転がったタイヤが
支柱に当たり、しかも倒れもせず
寄り添うように立ち止まるなんてこと、あるかしら?

もう1本のタイヤを片手で転がしながら斜面を降りてきたおばちゃんは
外灯にもたれるタイヤを取り上げて車に積み
「よっこらしょ」という感じで階段を上り、頂上で「ふぅ」と息を吐いて
帰っていった。
どこまでも普通のおばちゃんだ。

タイヤは4本あるだろうから
ひょっとしたらおばちゃんは戻ってくるかもしれないと期待していると
案の定、残り2本を携えて、おばちゃん再登場。
今度はなんとしても転がる様子を目撃したい。

いまや“ステージ中央”ともいうべき位置で立ち止まり、
例によって特に狙うでも構えるでもなくさらっと第1投。
しかし、あろうことか今回は続いて第2投を放った。
ポイポイッと。
私は寝室へダッシュ。

おばちゃんの投じたタイヤは2本ともまっすぐに転がり
ほとんど同着で斜面を駆け下りて外灯のすぐ横を通過し
お互いにぶつかって倒れて止まった。
つまり、2本のタイヤは1箇所に仰向けの横並びになった。
すごい。

このおばちゃん、タダモノじゃないぞ。
さっきの見事な“外灯止め”もきっと偶然じゃない。
力加減、角度、速度、さらには雨降りの斜面の濡れ具合も
すべて計算ずくなのか?
プロのタイヤ転がし師なのか?

自宅に居ながらにして
こんなおもしろいライブ・パフォーマンスが見られる。
うちは楽しい。

※これを見たのは4/1。でも実話。
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by emi_blog | 2012-04-06 02:32 |  

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