欲求型

自分や他人の欲求タイプを知り
それとうまくつきあっていくこと、について。



人の欲求は大きく分けて2種類あると思う。
自分の希望を叶えたい欲求と
誰かの希望を叶えたい欲求。
いずれにしても欲求の依頼主は自分。
ただし前者は欲求の受け取り先も自分なのに対し
後者は欲求の受け取り先をどこか別の人に設定している。
そこで前者を『直接欲求』、後者を『間接欲求』と名付けておく。
さらに、簡単には割り切れないという反論は承知のうえで
あえて人を『直接欲求型』と『間接欲求型』の2タイプに分類してみる。

『直接欲求型』の人は「自分が幸せになること」が
あらゆる行動の目的になっている。
出世したい、注目されたい、お金を儲けたい、モテたい、などなど
獲得系の欲求が目に付きやすいが、実はこれらは
寂しい思いをしたくない、不安から逃れたい、という回避系の欲求と表裏一体。
欲求が満たされると一時的に安心するが
すぐに別の欲求が生まれてくるので、欲求が枯れることはない。

一方で、おそらく数としては圧倒的少数だが
『間接欲求型』の人もいる。
この人たちの目的は「自分以外の誰かが幸せになること」。
自分の幸せが優先されるようなことは避け、
他人の幸せのためになるようなことを選んで行動に移す。

『直接欲求型』と『間接欲求型』は単なる性質の違いである。
どちらが良いとか悪いとかいうことではない。
どちらが麗しく、どちらが汚れているということでもない。
にもかかわらず、優劣や美醜で2つを比較することが多く
そのために歪みが生じているような気がしてならない。

優劣や美醜でこの2タイプを比較するような場面では
どうしても『直接欲求型』より『間接欲求型』のほうがウケがいい。
前者は傲慢、自己中心的で
後者は謙虚、献身的などと評価されるのが典型だろう。
私利私欲が疎まれ、他利無欲が賞賛される。

しかし忘れてならないのは、
これらは二つとも等しく欲求であるということ。
ほかでもない自分が「したい」と思い、叶えば満足し、
叶わなければ不満になるという以上、両者には違いがない。
『直接欲求型』が傲慢で自己中心的なら
『間接欲求型』も傲慢で自己中心的なのである。

ところが、『間接欲求型』が殊更に美しく描かれ、
まるで人のあるべき姿、理想像のように喧伝されると、
本来『直接欲求型』である人たちがそれを隠したり、偽ったり、
無意識に『間接欲求型』になろうとしはじめたりする。
で、ややこしいことになる。

ある人は『間接欲求型』に強く憧れるあまり
自分の持つ『直接欲求』を忌み嫌い、自己嫌悪に陥る。
ある人は『間接欲求型』を装って与えることばかりに執着し
疲弊したり、孤独感や無力感に苛まれたりする。
またある人は自分の『直接欲求』を正当化するために
「きれいごと」や「偽善」という類の言葉で『間接欲求』の存在を否定し
自分や他人を攻撃する。
「子どものため」「家族のため」「会社のため」と主張して
まるで『直接欲求』など見たこともないかのように振舞う人もいる。
自己顕示欲を隠したがるのもここに含まれるだろう。

これらの葛藤やジレンマは皆、
「私は『直接欲求型』なんだ」と認めることができれば消えていく。
恥じることなど何もない。

『直接欲求型』の貪欲さは社会的にも有用であることが多い。
次々に生まれる欲求は努力や競争心や向上心に引火して、
人を前進させる原動力となるから、自己実現につながりやすい。
スター性を備え、求心力を持つリーダー的な存在の人には
必須の欲求だ。
『直接欲求型』が数の上で優勢なのは、生き物として自然なことだろう。
肉食・草食にかかわらず、動物たちは『直接欲求』丸出し。
『間接欲求型』は、おそらく人間以外では生きていけないし
人間界でも少数派だ。
でも、希少だからといって『間接欲求型』を盲目的に崇拝するのはやめよう。
『間接欲求型』は特に経済的な意味で大成功する可能性が低い。
そんな人ばかりでは、社会は成り立たない。
『直接欲求型』の人は「我々が社会を牽引している」ぐらいの誇りを持って
堂々としていればいい。

もちろん前述のとおり、少ないながらも『間接欲求型』の人は実在する。
疑心暗鬼になって、本物の『間接欲求型』を捕まえて
化けの皮をはがそうなどとは思わないでほしい。
彼らは放っておけば淡々と彼らの役割をこなす。
というか、放っておいてもらったほうが力を発揮できる。
取り立てて「すごい」だの「偉い」だのと言われるとやりにくくなるから
「ふーん、珍しいね」と思うぐらいに留めて、ぜひそっとしておいてやってほしい。

ところで、日本が外国からナメられるようになってしまったのは
『間接欲求』を美徳とし、
『直接欲求』を捨てることに励みすぎたからではないだろうか。
「世界のために・みんなのために」?
まぁたまにはそういう民族がいてもいいけどさ。
自国の利益を最優先しておかないとマズイことが
そろそろいろんなところで出てきてるんじゃないの?
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by emi_blog | 2012-08-13 10:52 | 文化  

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