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レベル

子どもってのは
大人の年齢を言い当てられないもんなんだよね。



子どもの英語教室を始めた頃
生徒たちに「何歳?」と聞かれることがよくあった。
親御さんに聞いてこいって言われたのかもしれないけど。
で、答えると「えー、おかあさんより若い」
(おかあさん、無断でバラしちゃってますよ)とか
「スイミングの先生の方が若いよ」(それはたぶん大学生)とか
ひと盛り上がりするのだった。

子どもは大人の年齢を言い当てられない。
これは大人もそうで
自分より年下の人のことはだいたいわかるけど
年上については、誰が自分よりどのくらい年上だとか、
どの人がどの人より年上だとか、よくわからない。
お年寄りでも中年でも、年齢を明かしたときに
「えー!若ーい」と反応されることを殊更に喜ぶ人がいるが
それは年下を相手にしていれば、当然そうなるのだよ。
彼らにはわかんないんだから。
彼らがその年齢に達すると、「あ、こんなもんか」ってなる。
彼らも年を取り、年下が増えてくれば「若ーい」と言われるようになる。
「そのうちわかる」ってことよ。

通ってきた道のことはある程度わかる。
これから行く道のことはさっぱりわからない。
未熟なうちは成熟した人たちのことはわからない。
誰が自分よりどのくらい成熟しているか、
どの人がどの人より成熟しているか、言い当てられない。
学問、スポーツ、芸術、技術、なんでもそう。
自分もその道を歩いてみなければ何もわからない。
ある程度進んでくると、通った道やすぐ先のことはわかるが
うんと先のことはやっぱりまだわからない。

「レベル」という表現は語弊があるかもしれないが
伝わりやすさのために採用しておくと、
レベルの高い人の、その高さを知るためには
自分がある程度のレベルまで達することが必要。
「上から目線」というのは悪い意味にしか使われていないようだけど
レベル構成の全体像は上からじゃないと把握できないだろうと思う。
下から見ているうちは「すごい」でひと括りになっちゃって
具体的にどこがどれほどすごいのか、見分けがつかない。

英語もある程度できるようになるまでは
レベルの高い英語とレベルの低い英語の見分けがつかない。
街のあちこちにおかしな英語が蔓延し、
英語っぽく見えるだけでOKになっていることに対して
平気でいられるのであれば
自分の英語レベルはそれより下にあるということで、
国のみんなが平気なら、その程度が国の標準レベルということだ。
この状態のままで、「間違ってるよ」「恥ずかしい」などと指摘されて、
そこだけを急場しのぎで繕ったって、レベルは上がらない。
全体のレベルが上がれば、おかしな英語を使う人はいなくなるし
もしあっても気持ち悪いから、放置しておけなくなる。

つまり、自分のレベルを上げていくと
自分より下のレベルのものが増えるので、わかることが増える。
だから手抜きを見つけるし、だまされにくくなるし、
その分、無礼な目にも遭うし、いいかげんな人が気になるし、
不条理なことも、歯がゆい思いをすることも増える。
それはしょうがない。
そこで腹を立てたり文句を言ったり、
あるいは値踏みをしたり優越感に浸ったりしていたら、
せっかく上がったレベルはそこで止まる。
少なくとも「努力」や「思いやり」、「許容」のレベルは上がらない。

一点豪華主義である特定の分野のレベルだけを上げるのは
そう難しくない。
全体的にバランスよくレベルを上げるのは大変。
にもかかわらず、レベルの高い人というのは
往々にして全体的にレベルが高く、どこを切ってもレベルが高い。
どうなってんだろ。

自分が高いレベルに近づくようになると
より高いレベルのものの本当の素晴らしさがわかるようになる。
それらを適切に評価し、鑑賞し、味わうことができるようになる。
こんな世界があったのか、と感動する。
うん、だから勉強はしといたほうがいいってわけ。

上には上がいる。
だから安心して上っていける。


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by emi_blog | 2013-09-18 00:35 | その他 | Comments(0)  

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