井の中の蛙

「井の中の蛙、大海を知った気になる」の
恐ろしさ。



季節柄、人の集まる場に参加する機会が多い。
その中で、日本の話をする機会も多い。
その中でも特に、自身はアメリカの内側にいて
日本の内側の人が外側に出てきたところを目撃している人の
話を聞く機会が多い。

日本の内側の人が外側に出てくる、とは
たとえば官公庁や企業の幹部の視察だったり、
学会など研究者や教育者の集まりだったり、
大企業が在米日本人学生を青田買いするフォーラムだったり。
いわゆる“国のトップ”に当たるような組織に属する人たちの
海外出張のこと。
私が聞くのは、アメリカ側にいて、それらのイベントを運営し、
日本からの出張者を受け入れている人たちの話。
事前の打ち合わせや宿泊の手配、お迎え、ご案内、お見送りなどを
担当している人たち。

彼らの感想を総合すると、だいたい次の3語にまとまる。
「甘い」
「遅い」
「わかってない」
ま、そうだろうね。

たとえば渡航前の段階では、事務方とのやり取りで
「本当にこんなやり方が日本ではまかり通っているのか」と
驚かされることばかりだという。
こちらからの質問に対し、回答が的を得ないので
やり取りの回数が無駄に増えてしまう、とか、
それを防ごうと、なるべく1往復で済ませるために
「Aについて回答してください。
もしAでない場合はBのような条件で代替しますが、
Cでは対応できません。
ただしBの場合はAと違って…」というようにすると
必要以上の情報をあらかじめ盛り込む手間が増え、
さらに日本側にとっては検討する案件が増えたと思われるのか、
回答までの時間が余計にかかってしまう、とか。

エクセルやパワーポイントを一目見れば、
彼らの職場で求められているのは
紙に落としたときの見た目の美しさであって、
スピードや効率は求められていないことが手に取るようにわかる。
その緻密さや丁寧さを盾に、仕事の遅さを正当化できるとでも
思っているのだろうか。

出張者がアメリカに到着し、イベントが始まっても、
アメリカ人をはじめとした外国人と交わっても、
井の中の蛙っぷりは健在。
「ここは日本じゃないんだよ」と言いたくなることが続出する。
そして、イベントの意義や、わざわざ渡航する意味を
まるで理解していないような行動をとり
「何しに来たんだよ」とも言いたくなる。
「観光客の方がマシだ」とさえ言いたくなる。
にも関わらず、本人たちはご満悦で
世界を知ったような気になって帰国していく。

ま、そうだろうね。

かつて大海を知らなかった蛙の多くは
物理的には井の外へ出てくるようにはなったけれど
構造としてはあいかわらず。
大海を目の当たりにしても、井の中の蛙から脱却できないのだ。
そうでなければ、大海を見た後、あんなに暢気でいられるわけがない。
何も見えていないくせに、大海を知った気になっている蛙は
大海を見たことのない蛙よりタチが悪い。
蛙のまま、「俺たち、海でもやっていける」なんて勘違いして、
井の中へ帰ると仲間たちを相手に
「海ってのはなぁ」としたり顔で自慢したりするのだ。
本当は海水でつま先が痺れたのに怖気づき、
以降は濡れないように気をつけていたけど
それは誰にもバレてないと思っている。

世界から日本を見ている人のほとんどは
日本がそういう状態であることを知っている。
その中には、日本国内に向けて
「それではいけない。目を覚ませ」と訴え、
本当の意味での大海を知らせようとしている人もいるが、
彼らの訴えは、今のところあまり機能していない。
一方、日本に対してすっかり失望し、見切りをつけている人は
自分や家族を守るために、
日本に頼らなくても生きていける道を確保すべく
準備を進めている。

仮に蛙を脱却しようと思うなら、それはそれは大変なこと。
まずはバーチャルでもリアルでも、せっかく大海に出たなら、
正しくショックを受け、自分たちの蛙っぷりを自覚すること。
そこからようやく「で、どうするか」という話になる。
選択肢は大きく分けて2つだろう。
危機感を持ち、がむしゃらに学び、大海でも生きていけるように進化するか、
謙虚に限界を認め、それを逆手にとって
大海には真似できない新たな文明を井の中で発展させるか。
いずれにせよ、相当がんばらなくちゃね。

蛙といえども「大海なんて知りません」「関係ありません」で
許される時代はもう来ない。
現状に満足するもしないも個人の自由だけど
現実から目を背け、波風立てずにじっとしていれば
昨日と同じ平和が今日も明日も続くと信じているなら
それは茹で蛙になることを自ら志願するようなものだろう。

私は転落しようと沈もうと、日本を愛していきたいと思ってはいる。
ただ、このところ着々と、愛し続ける自信がなくなってきて、
困っている。


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by emi_blog | 2013-12-01 07:00 | 文化 | Comments(0)  

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