The Eternal Zero

映画"The Eternal Zero"を
観ている人を見た。



今どきの飛行機はエコノミー席でも
個人用のモニターがあって
好きな映画を自由なタイミングで好きなだけ観られる。

字幕の言語もある程度は選べるようだが
かゆいところに手が届くほどではなさそう。
私は映画を観ないので詳しくはわからないが、
機内の様子を見る限り、英語の映画は
中国語やアラビア語の字幕付きで観ている人が多い。
英語話者で翻訳が不要であろう人も
なぜか外国語の字幕付きで観ていることが多いように思う。
邪魔じゃないのかな。

英語の映画に英語や日本語の字幕が付いているのは
見かけたことがないような気がする。
英語が不得意そうな日本人も英語の映画を字幕なしで観ている。
日本語は吹き替えがあるのかな。

で、日本語の映画には英語の字幕が付いている。
日本人も英語字幕付きで観ている。
邪魔じゃ…ないんだろうな。
見えてないもんね(参照)。

日本からアメリカへ戻る機内で
私の右斜め前の席の、30代日本人男性が『永遠の0』を観ていた。
画面は英語字幕付き、音声はイヤホンで聞いている。
そして、彼の隣の席の50代アメリカ人男性が
その画面から目が離せないという様子で横から観ていた。
彼にとっては音声なし、英語字幕だけが頼りの"The Eternal Zero"。

とても特殊な光景だと思った。

この飛行機は、フィリピンを発ち日本を経由して
アメリカへ飛んでいる。
つまりアメリカ人男性はフィリピンか日本に滞在して
母国へ帰国するところ。
この映画を自ら選んで観ることは、おそらくないだろう。
その彼の横にたまたま日本人が座り、映画を観はじめた。
なんとなく隣の画面に目をやったのをきっかけに
そのまま映画に見入ってしまったのだろう。
自分のモニターで同じ映画を観ることもできるけれど
それはしない。
目を逸らすこともできるけど、それもしない。

日本人男性は、おそらく日本在住で
出張のためにアメリカへ向かうところ。
『永遠の0』が話題になっていることは知っていて、
でもこの映画に特に強い思い入れがあるわけではいない。
映画館で、お金を払ってまでは観ていないだろう。
機内で暇だし、日本語で観られる映画だから、という理由で
なんとなく選んだだけかもしれない。

日本からアメリカへ飛ぶ飛行機の中で
日本人とアメリカ人が並んで
日本人の作った第二次世界大戦の
日本人戦闘機パイロットの物語を、観る。
その光景を、私は異様だと思った。

機内で『永遠の0』を選択して観ている日本人は
他にも大勢いる。
その周りにはアメリカ人が大勢いる。
アジアの国を旅したアメリカ人たちなので一般的ではないにせよ、
アメリカ人であることには違いない。
日本人はみんな、英語の字幕付きで観ているから
自分が何を観ているのか、周りにわかるようになっている。
アメリカ人は、同じ飛行機に乗り合わせた日本人たちが
"The Eternal Zero"を観ている様子を見ている。
日本人には、見られているという自覚はない。
飛行機は着々とアメリカへ近づいていく。

日本の会社なり、組織なりを代表して
今まさにアメリカへ入ろうとしているこの日本人たちの
国際感覚って、何だろう。
アメリカ人たちは、この様子をどう解釈しているのだろう。

帰宅して、"The Eternal Zero"のレビューを拾い読みした。
いわゆる映画コメンテーターのものではなく
普通のアメリカ人の感想を読みたかったのだが
うまくいかなかった。
英語という言語には国を特定するフィルター機能がないので
アメリカ人の反応を抽出することは難しい。
また、この種のキーワードに反応はしても
映画を観る気にはならない、ということもあるのだろう。
映画とは無関係のコメントが多い(参照)。

"The Eternal Zero"のレビューには、ほぼもれなく
現日本国首相がこの映画を気に入っている旨と
アニメ界の巨匠が批判的である旨が盛り込まれている(参照1参照2)。
このこと、日本には届いているのかな。

映画『永遠の0』は、封切りからまもなく4ヶ月が経つというのに
いまだ“大ヒット上映中!”(参照)。
3月末までに興行収入85億6500万円を突破し、
現時点で邦画歴代興収6位なんだそうだ(参照)。
日本人がこの映画を観た感想には
「平和」「感謝」「家族」「愛」「感動」「涙」というような語が目立つが、
日本人がこの映画をそういうふうに観ているという事実が、
外国に届くことはあるのかな。

日本人のナイーブさ、感傷は本当に独特で
英語などの外国語で説明するのはとても難しいだろうと思う。
説明しても理解できない可能性が高いということを
日本人が理解するのもとても難しいだろうと思う。
こんなところにもガラパゴス化、かも。

ちなみにウィキペディア(参照)などに載っている、
“日本で公開された日本映画ランキング”に当てはめると
どう見ても6位にはなりそうにないのだが
どうやら記事ではサラッとアニメ映画を省いて
ランキングし直しているようだ。
なんでそんなことをするのかな。

謎だらけ。


【関連記事】
井の中の蛙 (2013/12/1)
英語教育ガラパゴス化 (2012/9/21)
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by emi_blog | 2014-04-14 17:51 | 文化 | Comments(2)  

Commented by tak-shonai at 2014-04-15 19:51 x
10年ちょっと前ぐらいになりますが、ニューヨーク行きの飛行機で、『たそがれ清兵衛』 を観ました。英語のタイトルは、"The Twilight Samurai" というもので、まあ、ギリギリ許せるかなと。

日本の時代劇を英語字幕付きで観ると、翻訳の具合が、気になって、気になって、ある意味、映画に集中しきれません。なまじ英語が見えるのも考えものでありました。
Commented by emi_blog at 2014-04-16 04:33
10年前はビジネスクラス以上の特権だったオンデマンドが、昨今はエコノミーにも広がりました。乗客がバラバラに映画を観ている様子を社会現象的に見渡すというのは新鮮ですよ。

私は周囲の人たちが観ている英語字幕付きの邦画を盗み見て、元の日本語に訳し戻すという遊びをよくやります。職業病です。
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