『良心をもたない人たち』

『良心をもたない人たち』を読んだ。



怖い本なのかなぁと思っていた。
ホラー映画みたいだったらどうしよう、と。

ぜんぜん違った。
良い本だった。
『良心』(原文では"conscience")の欠けた人を通じて
良心のことを深く考えることができた。

著者によると、『良心』は
人間の五感、第六感に次ぐ「第七の感覚」(p.43)。
人類の進化の中で比較的最近開花したもので
すべての人間が持ち合わせているわけではないという。
良心が欠けている人は利己的で不道徳な行動をとり、
支配を好み、“勝つ”ために手段を選ばず(p.75)、
秩序を乱し、周りの人を不幸にする。
それでも、「一貫した無責任さ」(p.75)によって
自己を肯定し、他人を否定して、優越感に浸る(p.77)。
「愛ややさしさといった感情的体験を
受けとめることができない」(p.168)。
そういう個体が、自然淘汰を経て生き残り、受け継がれ(pp.227-8)、
少数とはいえ我々人類の中で一定の繁栄を続けている。

帯にも大きく出ている「25人に1人」(p.15)というのは
アメリカの統計だが、詳しいことは書かれていない。
ま、さほど珍しいもんじゃないよ、という趣旨だけいただいておこう。
そしてこの割合は日本ではかなり低いらしい(p.181)。
神道的な「万物のあいだの相互関係」や、
「きずなにもとづく義務感」(p.183)を信仰として持つ文化が
良心を育てることに影響しているという指摘には賛成。
ただ、それは比較文化考察に頻出の、“古きよき日本”の話。
現代日本は文化や信仰に無頓着で、新しもの好きで、
アメリカ化が止まらないから、
いまデータを取ったらアメリカと大差ないかも。
それどころか、日本の流行は一挙に勢力を増して
あっという間に過半数に転じたりもするから、
アメリカの割合を越しちゃうことさえあるかも。

この本で私は『良心』の意味を何度も確認した。
「良心は他者への感情的愛着」(p.53)
「良心は人間(ときには動物)を、行動の掟や世間的な期待よりも
尊重する」(p.55)
「たとえ権威に逆のことを命令されても、
良心をはっきりと目覚めさせておけることが、本当の強さ」(p.97)
「良心はさまざまな挑戦を受ける」(p.97)
「私たちは相手に良心がないことをなかなか見抜けないが、
良心を欠いた人間はだれが善良でだまされやすいか、
即座に見分ける」(p.126)
「人間の大半は良心をもっているし、愛することができる」(p.217)

そして、自分の行動を見つめ直した。
「つねに悪事を働いたりひどく不適切な行動をする相手が、
くり返しあなたの同情を買おうとしたら、警戒を要する」(pp.145-6)
「相手を避けること、いかなる種類の連絡も絶つこと」(p.214)
「かんじんなときには、笑顔を見せず冷たく接することを
忘れてはならない」(p.216)
なるほど。

著者はサイコパスの感情的破綻を、
「感情的知能がまったくない」
「人の心の動きを理解する能力が欠けている」と表現している(p.256)。
この言葉を借りれば、良心を持つということは
感情的知能がある、ということになる。
ではこの知能は高ければ高いほど良いのだろうか。
ホラ、なんでも程度問題っていうじゃん。
高すぎるのもよくない、なんてことにはならない?

…と思いながら読み進めたら、最後にちゃんと答えがあった。
良心というのは、たとえそれが大きすぎても、大丈夫みたいよ。
そうかぁ。
ま、そりゃそうか。

「良心をもっていると(中略)迷いも、激しい怒りも、
快さも、喜びも感じることができる。
そして良心があれば、愛という最高のリスクを受け入れるチャンスも
あたえられる」(p.261)
あ、これ、最近教わったアレだ。

マーサ・スタウト. (2012). 良心をもたない人たち. (木村博江・訳). 草思社.


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勉強中 (2014/3/30)
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by emi_blog | 2014-04-27 10:17 | 読書感想文 | Comments(2)  

Commented by tak-shonai at 2014-04-29 23:32 x
面白そうですね。読んでみます。

"ネズミもすなる 「思いやり」 というもの" という記事を書いた時点で、人間に限らず empathy というのはあるものと思っていましたが、conscience として深く突っ込むとどうなるのか、興味があります。

http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2011/12/slash.html
Commented by emi_blog at 2014-04-30 02:14
ちょっと読み手を選ぶ本ですが、takさんならきっと有効活用してくださると思います。私は訳本で読みましたが、翻訳が気になるようなら原書で読まれたほうが良いかもしれません。訳本にした理由は、翻訳者の判断で日本の状況に合うよう“アレンジ”が加えてあるとのことで、本の内容からして今回はこれを利点と考えたからです。日本語として気になるところは英語に訳し戻して読みました。

ネズミにも「思いやり」のあるヤツとないヤツがいるのでしょうね。「欠け」の割合は4%より高いか低いか…。どうでしょうね。

いただいたリンクの記事と、記事中のリンク先を読んで、Empathy について考えてみました。良い刺激をありがとうございます。http://emisblog.exblog.jp/19733680/
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