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ローマ字

ちょっとした思いつきから
ローマ字について軽く取材してみた。



非アカデミックの場でカタカナ語の議論をする中で
かなり多くの日本人学習者が
日本語(のカタカナ表記)と英語を混同していることに気づいた。
これがいわゆる“中級の壁”となって
学習を阻んでいるケースもありそうだし、
日本語と英語を切り離すことで
“万年中級”から脱却できる可能性もありそう。
実際、上級者には学習当初から
「日本語と英語は別のもの」という意識があったタイプが多く、
おそらく英語教員などの指導者もこれに属する人が多い。
私もそう。
自身が最初っから混同しないタイプの学習者だったため
教える立場になったとき、学習者の混同に気づきにくいのだろう。

で、おなじみの
「まぁ私が思いつくぐらいだから誰かとっくに研究してるでしょ」
を発動し、そうあってほしい願いを込めてざっと探してみた。
が、案の定、残念ながら、それらしい研究が見当たらない。

じゃあより混同が起きやすそうなローマ字ではどうかな、と思って
探してみた。
英語教育の文脈、特に小学校英語関連で
ローマ字について書いたものはたくさんある。
が、うーん。
私が見る限り、たとえば「“make”を“マケ”と読んじゃう」的な
現象についての研究ばかり。
それでフォニックス方面に行っちゃう。

そうじゃなくてさ。
これはもっと認知的な問題だよね。
誰かやってないのかしら。

たとえばこちらの論文*(参照)にはこんな記述がある。
「ローマ字(日本語の音韻構造に則った表記方法)と英語の区別が
児童の中でしっかりと認識されていない」 (p.8)
「ローマ字は英語ではないことを
しっかりと児童に認識させなければならない」 (p.10)

うん、そのへんなのよ。
ただこの記述も、論文の内容からやや飛躍した
Implication 風・個人的な感想という程度のもの。
その論点があるなら、なぜその研究をしなかったんだろ。
惜しい。

Bilingualism の分野で、母語と目標言語の混同は研究されてるけど、
日本語のローマ字ほどひっかけ問題として難度が高いものをもつ言語は
なかなかないのだろう。
Bilingualism 研究者で日本の国語教育に明るい人はいないのかなぁ。

で、まぁそのうち見つかるのを期待しつつ、
私は私で、友人たちの経験を取材してみることにした。

まずは日本のインターナショナルスクール出身者のM、
日本の朝鮮学校出身のH、
アジアの日本人学校出身のNとその弟に当たってみた。
彼らは日本語母語話者でありながら、
いわゆる“特殊”な言語環境で子ども時代を過ごし、
いわゆる“普通”の日本の学校とは異なる状況で
日本語の教育を受けた人たち。
かつ、第二言語習得という意味で成功した人たち。
彼らのローマ字学習経験を聞いた。

次に、日本と同じく独自の文字文化を持ち、
英語学習に苦労している東アジアの国々の人たちに聞いた。
中でも特に言語教育に携わっている人など、
言語意識の高い友人たちから貴重な意見や資料が集まった。
対話をするうちに、彼らの方が
日本のローマ字の特殊性に興味を持ちはじめてしまい、
彼らの質問に答えるために、私も改めてローマ字について学ぶ機会を得た。
「ぜひちゃんと調べて書いて。
emiの研究が発表されるの、楽しみにしてるよ」
なんて言われてしまった。

いや、やんないっすよ。
誰かやんな。

それにしても、知れば知るほどおもしろく、
うっかり深みにはまってしまいそうな予感はする。
そしてわずか数日のうちにこんなに豊富な資料が集まるネタなのに、
日本ではわりと放置されていて、
小学校英語の流行のおかげでようやくうっすら注目され、
それでもただ表面に出てきた“弊害”にしか光が当たっていないことが
謎といえば謎。

日本の小学校で国語を教える先生に、第二言語経験が少ないのも
関係がありそうだな。
第二言語学習者として成功していないということは
先生がた自身、日本語と他言語を切り離せていない可能性が考えられる。
第二言語ができて国語が得意な人は
外国人向けの日本語教育へ行っちゃうことが多いしね。
英語が使えて、研究経験のある日本の国語の先生と
お話ししてみたいな。


*本田勝久・小川一美・前田智美. (2007). ローマ字指導と小学校英語活動における有機的な連携.
大阪教育大学紀要 第Ⅴ部門. 56(1), 1-15.



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カタカナ語の進化 2015/3/1)

by emi_blog | 2015-07-30 04:08 | 趣味 | Comments(0)  

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