機嫌

「機嫌をとる」って、
もっと高く評価されるべきじゃないかと思う。



機嫌がいいって素晴らしい。
機嫌がよければ生産性は上がって(参照)、
逆に機嫌が悪いと下がるんだとか(参照)。

機嫌がいいと、良いことが起きる。
良いことが起きて、また機嫌がよくなる。

じゃあ、だよ。
他の人の機嫌をよくする行動ができるって、すごくない?
他の人の機嫌をよくするということは
みんなの生産性や創造力をアップさせ、
みんなが楽しく穏やかに暮らせる可能性を高め、
豊かで平和な社会や世界を築くことにつながる。
これ、決して大げさじゃないと思う。

私には他人の機嫌を上手にとれる友人がいる。
運転免許をとる際には路上試験で
あからさまに不機嫌そうな試験官に向かって
「いやぁ朝早くからありがとうございます」
「大変なお仕事ですよね」などと声をかけてから出発した。
引越の際には、ほろ酔いでのんびりやっている業者のおじさんに
「来てくださって本当に助かります」
「さすが。運び方が上手いですね」などとおだて、
おじさんが延々と語るおもしろくもない昔話を
笑顔をたやすことなく聞き続けた。

そして彼女は
「だって、それで結果が良くなるならいいじゃないですか」と
サラッと言う。
「そりゃムッと来ないわけじゃないけど、
そのせいで路上試験で落とされるのもイヤだし、
引越荷物を乱暴に扱われたりするのもイヤ。
機嫌をとるなんて簡単なことだし」。

いやぁ、簡単じゃないっすよ。
少なくとも私には難しい。
私なら「あなたこれ、仕事でやってんでしょ?
なに不機嫌そうにしたり、酔っ払ったりしてるわけ?」と
つい厳しい目を向けてしまいそうだ。

でもそれって結局、日本的な“カミサマ客”の体質だよね。
そりゃ私は自分の不機嫌を店や職員などのサービス提供者にぶつけて
ストレス解消しようとしたり、ケンカをふっかけたりはしないけど、
サービス提供側の不機嫌を受け止めて吸収してあげたり、
まして不機嫌を解消してあげたりするという発想はなかった。
どこかに「“客”である私が、このワタクシが、
なぜそんなことをさせられなければならないのだ」という
傲慢さがあったのだろう。
相手の不機嫌に巻き込まれて、私も不機嫌になってしまっていたのだ。

友人があまりにもあっさりと、あっけらかんとやってのけ、
私に教えてくれたのは、つまり
「機嫌をとるって、Win-Win だよ」ということだと思う。
そして、それは確かにそうだなと思う。

そもそも、「機嫌をとる」自体に悪い意味はないはずだ(参照)。
悪い意味が生じるのは、相手の機嫌をよくするための
やり口が露骨だったり、態度が卑屈だったりする場合(参照)。
あるいは、機嫌をとってさえいればいいと考え、
やることをやらずに誤魔化したり、相手をバカにしたりする場合。
しかし、それは機嫌のとり方として下手だと思う。
現に、それを見た第三者の機嫌を悪くしちゃってるんだからね。

下手なやつらのせいで「機嫌をとる」の印象が悪くなっている。
それで、「そんなズルいことはしたくない」という理由のもと、
多くの人は「機嫌をとる」を実践する機会を逸している。
誰の機嫌もとらずに、一生を終える人もいるかもしれない。
そしてそのことは「潔い」とかなんとか、
良いように思われているのかもしれないが、
実はそれは大きな損失だと思う。

考えてみると、サービス業で一流と呼ばれる人は
「機嫌をとる」ことのプロでもある。
相手の不機嫌を吸収し、中和し、上機嫌に変換して返す。
もちろんそれによって、たとえば売り上げとか人気とか、
得になることがないわけじゃないし、
そういう計算や下心がまったくないと言えば嘘になるだろうけど、
何がどうでも、他人の機嫌をよくすることができるって、素晴らしい。
“清廉潔白”や“正義の味方”で周りの人を不機嫌にさせる人は
少し私利私欲に走っても構わないから、
ぜひとも「機嫌をとる」スキルを身につけてほしいと思う。

だいたい、機嫌って、そうそう取れるもんじゃないでしょ。
いかにも取りに来たな、って雰囲気を出したら取れないだろうし、
遠慮してても取れないし。
確実に取りには行きつつ、決してやりすぎない。
そのさじ加減は、コミュニケーション的にもかなり高度だと思う。

同僚の機嫌がよければ、仕事はうまくいきやすい。
友人の機嫌がよければ、楽しみが広がる。
家族の機嫌がよければ、幸せを感じる機会が増える。
それは、みんなわかっているはず。
だったら、他の人の機嫌を、相手任せや成り行き任せではなく、
自ら働きかけて、意図的に、人工的に、よくしてしまえばいい。
「だって、それで結果が良くなるならいいじゃないですか」。
友人の言葉は深い。

「機嫌をとる」は、高度な技術であり、
トップクラスまで到達するには才能が必要かもしれないが、
訓練によってある程度は習得できるだろう。
「機嫌をとる」から悪い印象を取り去り、
大人も子どもも、ためらわず、もっと積極的に
機嫌をとれるようになったらいいと思う。
卑屈や露骨やごまかしじゃない、上級なご機嫌とりね。
「足を引っぱる」が「機嫌をとる」に変わったら、
世の中のいろんなことがゴロッと変わるんじゃないかしら。

だまされたと思って、一回やってみ?
意外と難しいってことがわかるから。


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by emi_blog | 2015-09-23 14:50 | その他 | Comments(0)  

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