自意識不足

本人は何とも思ってないんだけどさ。
周りは困惑するのだよ。



上級言語コーチ講座の第2回。
最初にマニュアルをもらう基礎講座と違い、
この講座は毎回終わるごとに教材が配布されるので
フタをあけるまで何をやるかわからない。

で、フタをあけてみたら、今回は実践の連続だった。
講師のRがいろんな受講生になり、私たちはRのコーチ役になり、
アドリブで模擬セッションを行って、お互いに評価する。
腕を磨くには練習あるのみだし、やれば勉強になるし、
後々「やってよかった」になるに決まってるんだけど
やる前は超緊張するし、やってる間は超テンパるし、
終わってからも反省しかない。
でも、まぁしょうがない。

その実践に次ぐ実践の中、
Listening(傾聴、かな?)の練習になったときのこと。
Listening は心理カウンセラーや一般的なコーチもやることだが、
言語コーチの場合、文法や語彙といった言語そのものも聴く。
私たちは7レベルの“聴くポイント”を分担し、
受講生役のRとコーチ役Bのやり取りを聴くことになった。

Rはサラッと
「せっかくなんで、私の現在の本当の困りごとをネタにするね」
と言って受講生役を始めた。
コーチ役Bはよく頑張っていたし、
私たちもなるべく与えられた課題だけに集中して聴いた。

終了後、担当ごとに各レベルの見解を共有。
Rは概ね満足そうだったが、最後に一言。
「みんなよくできました。ただ、Bのコーチングだけど。
ちょっと提案が多すぎたわよね。
もっと受講生に考えさせるようにできたはずでしょ」。

いやいやいや。
そりゃトレーニング的にはおっしゃるとおりですよ。
でも無理だよ。
いくらロールプレイでも、いつもお世話になりっぱなしの、
みんなが頼りにしているRの、本当の困りごとだもん。
聴いてて、辛くなっちゃったんだよ。
Bは「あれは提案じゃない」と反論してたけど
私はむしろ「そりゃ提案するでしょうよ」と思った。
で、「Rの実話だからだよ。
ここにいる皆、助けたくなっちゃうのは当然だよ」と言ったら
Rは「まぁ、ありがとう」なんて言っていた。

それで思い出した。
私がアメリカの大学院で受け持ったあるクラスのこと。

それはTESOLの教員養成で必修の「第二言語習得」のクラス。
学期の始めからいろんな理論や評価法や実例を学んできて、
学期終盤に差しかかった頃、
学生たちに何か実践的なことをやらせたいなと思った。
いくら教室で習ったって、実際に現場で利用できなきゃ意味ないし。

学生たちはESL教師の卵なので、
非母語話者のサンプルを用意して
それまでに習った評価法や理論を組み合わせて、評価する、
というアクティビティを思いついた。
ただ、あいにく授業までそう時間がないので
すぐに適当なサンプルを見つけるのは難しい。

で、私でいっか、と思った。
私という非母語話者の英語を評価してもらう。
学生たちはすでに約3ヶ月間、私の英語を聞いているわけだし、
ちょうどいい。
専門知識を持つ母語話者に自分の英語を
よってたかって評価してもらう機会なんてなかなかないので
私にとってもオトク。
一石二鳥のものすごく良いアイディアだと思った。

アクティビティの説明をすると、学生の多くが顔を曇らせた。
グループごとに評価をまとめる用紙を配って
話し合いを始めるよう指示したが
なんだか全体的に盛り上がってこない。
「これまでに学んだ理論を使ってね。
発音とか、文法とか、ポイントがあるでしょ?
自分の生徒だと思って、ちゃんと評価してくださいよ」
とか言いながらグループを見てまわっても、
評価用紙は白紙のまま。
一人、母国で教師経験のあるアジアからの留学生が
はりきって辛口コメントを披露していたので
「いいねぇ、その調子」と褒めたのだが
他のメンバーの反応が悪いせいか、
結局、その留学生も静かになってしまった。

そのうちに、とうとう学生の一人が
「私たち、emi を評価なんてしたくない」と言った。

それでやっと自分のしでかしたことの意味がわかった。
それからもう何年も経つけど、あの時の感覚は
今でもくっきり思い出せる。
苦い苦い思い出。
私のプライドの低さ、鈍感さ、自己を客観視しすぎなせいで
学生たちに不快な思いをさせてしまった。
私はよくても、周りに迷惑をかけるということが
あり得るのだと知った。

自分を実験台にすることを厭わない。
これは面倒見が良く、サービス精神が旺盛で、気前が良く、
クリエイティブで、他の人がやらないことを考え出し、
思いついたら何のためらいもなく提供するタイプの人の
弱点なのだと思う。
自分は平気だから、自虐とも思わずうっかりやりすぎて、
周りの人を辛い気持ちにさせたり心苦しくさせたりしてしまう。

そんな場面に出会うことはめったにないが、
今日のRを見て、「あぁ、やっぱ似てるな」と思った。
本人は身を削ってるつもりもないし、
ただサンプルとして手っ取り早いから自分を使ったんだよね。

でも、よくないよ。
かっこつけや自意識過剰は、まぁそりゃ面倒くさいけど、
放っておけるからまだマシ。
かっこつけなさすぎや自意識なさすぎは、本当に迷惑。
気をつけましょう。

…と、ここまで書いて。
は。
うっかりまた大失敗をさらけ出しちゃってんじゃん。
自ら古傷を開いて塩を塗るようなことしてんじゃん。
学ばないなぁ。
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by emi_blog | 2016-04-13 14:05 | その他 | Comments(0)  

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