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バス

You get what you pay for.
しょうがないと言えばしょうがない。



値段の安いものがすなわち悪いものとは限らない。
高くても悪いものはあるし安くて良いものもある。
お金を出せば良いものに当たりやすく
ケチるとハズレをつかまされやすくなるが
要するに確率の問題でしかない。

日本の交通はどれも値段が高い。
燃料やインフラや人件費など
すべてに莫大な費用がかかっているし
サービスの質が過剰なほどに高いので
ああいうことになっているのだろう。
たかだか数分の公共交通機関の遅れが大混乱を招くのは
安全で時間に正確なサービスの弊害でもあるし
社会システム側の欠陥を助長してしまうのだけど
このような奇跡的なサービスを安定供給するというのは
やはり高度に成熟した国にしかできない。
オッズ0.99の大本命。
つまり、高いだけのことはある。

国の広さ・文化・お金に対する考え方など
ほぼ共通点のない日本とアメリカを単純比較したって
まるで意味がないのだけど
それなりに経験を積むまでは
比べることに意味がないということが理解できない。
私だって初心者のうちは
「日本だったらこんなことありえない」とよく思ったものだ。
で、比較をしなくなると腹の立つことは減るのだが
だからといって迷惑が減るわけではない。
あいかわらず困ったことは起きる。

最近NYCへ行くのにMバスを使い始めた。
AlbanyからNYCまでは車でも電車でも2時間半。
電車が$35-75、
自家用車のガソリン代+高速代で約$50かかるところ
Mバスならだいたい$5-20。
予約のタイミングや時期・時間帯によるけど
最安ではなんと$1で行ける。
シートはそこそこ快適で車内Wifiも使える。
Albanyは駅の駐車場が発着所なので
自宅から車移動の人でもたとえば
往きはMバス、帰りは電車というふうに使うこともできる。
出発の遅れや渋滞で時刻表どおりには着かないけど
過去数回は30分以内の遅れで収まっていた。

ところが。
今回はとうとうつかまった。

まず出発時刻になってもバスが来ない。
以前にも30分ほど遅れてきたのを知っているので
私はバス停のすぐ横に自分の車をとめて
車内で待機していたが
外で待っている人たちは寒そうだった。
バスは50分遅れて到着。
運転手のおばちゃんが言い訳するなか
乗客は無反応でバスに乗り込んだ。

70分遅れでようやく出発。
大きな渋滞もなくまあまあスムーズにNJへ入り
遠くにマンハッタンが見えてきた。
日没前に到着の予定だったが
すでにトワイライトで摩天楼が浮き出ている。
この先のトンネルが混んでいても
1時間半遅れぐらいで着くかなぁと思っていた。

するとバスは高速から外れパーキングエリアで止まった。
私は二階にいたので様子は見えないが
運転手が"I don't know why"と前置きして
「別の運転手が来てここで交代するらしいのよ。
彼はもう近くまで来てるって言ってたんだけどまだみたいね」
と言っているのが聞こえた。
私周辺の乗客は顔を見合わせて苦笑い。

そういえばここに着く前にも運転手は無線で
「え?どこ?どこのパーキング?」とかやっていた。
パーキングに着いてからは
「どこにいるの?違うわよ。バカじゃないの。
まぁいいわ。なるべく早く来て」みたいなやり取りをしている。
当分は止っているらしい様子を見て
乗客の一部はトイレや売店へ出て行った。

20分ほどして交代の運転手が到着。
ところがバスを降りた客が戻ってこないので
まだ出発できず。
やっとバスが動き高速に乗ったかと思ったら
あろうことか来た道を戻っている。
一階の乗客が「Albanyじゃなくてシティへ行くのよ」
と言っているのが聞こえた。

すぐに最寄の出口から高速を下り
住宅地を走る。
アメリカの高速道路は入口と出口が接続されていないので
また入口を探さなくてはいけない。
さっきの乗客はこの辺りに詳しいらしく
「次を右、そこはまっすぐ」とナビをしている。

が、工事現場に突っ込んで行き止まり。
作業員のおじさんが近づいてきて
「こんなでっかいバスが通れるわけないだろ」と笑っている。
ゆっくりバックして向きを変え
どうにか高速入口を見つけて正規ルートに戻った。

予定より2時間45分遅れて到着。
こういうとき日本人なら確実に文句言うけど
アメリカ人は誰もなんにも言わない。
荷物をとって歩き出して初めて
携帯電話で家族や友人を相手にグチる。
お客様文化と提供者様文化の違いだよね。

待ち合わせのお店に着いたらWはもうほろ酔い。
ま、それもしょうがない。

by emi_blog | 2010-11-05 05:42 | 文化 | Comments(0)  

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