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Critical Thinking

「Critical Thinkingについて学びたい」
という相談があった。



critical thinking。
辞書を引くと『批判的思考法』なんて
よくわからない訳語しか載っていない。
そんなネガティブな、ひねくれたような名前じゃ
かわいそうだよ。
『批判的思考法』が流行って
日本人が揚げ足をとったり、重箱の隅をつついたり、
やたらとテレビ局や新聞社にクレーム電話を入れたり、
ブログやツイッターを荒らし始めちゃったらどうすんの。

この訳語のまずさは、いかに日本人が
critical thinkingに馴染みがないかを反映しているとも言える。

critical thinkingとは提示された意見などに対し
内容を多角的に吟味し、論理的に不完全な部分を的確に指摘し、
総合的かつ客観的な評価を下すプロセスのこと。

日本語では“批判”といえばダメを出すこと、
“評価”といえば褒めること、という印象を与えがちで
どちらも偏りが感じられる。
強みと弱みの両方をきちんと“批評(critique)”しなければ
冷静な判断はできないのにね。

どんなに優れた論述でも、必ずどこかに
筆者のbiasなり、都合のよい解釈なり、曖昧な記述なり、
根拠が明示されていないところなりがある。
それらを指摘し(“批判”)、
かつ、良いところを指摘(“評価”)する。
完璧なものはこの世に一つもないけれど
良いところが一つもないものも、そうめったにないのだ。

弱点には徹底的にダメ出しするが
価値のある部分は賞賛する。
その作業を行うときに頭の中で起きている動きを
critical thinkingと呼ぶのだと思う。

冒頭の質問は
「critical thinkingを人生に生かしたい」という
わりと壮大な目的のもとに出されているのだが
読めばわかる初心者向けのハウツー本や
講義のひとつでも紹介してもらおうという
どこか気軽さが漂うものでもあった。
OLの習い事じゃあるまいし、そうは問屋が卸さないのよねぇ。

質問者は人生の中期にあたる年齢の方なのだが
回答に対するお礼コメントのなかに
「今までの人生でcritical thinking の発想も無かったし、
実際に自分の意見を求められる事よりも
周囲の空気を読んで行動する事を暗に求められる事が多かった」
と書いている。

そこに気づいたというのは大きな一歩。
でもそれだけでは何も始まらない。
突然見えてきた課題の多さに圧倒されないで
厳しくともなんとか現状を打破してほしいと心から願う。

by emi_blog | 2012-03-18 05:07 | 文化 | Comments(0)  

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